第一回 ふげん社写真賞 グランプリ受賞作品
木原千裕「Paths of Light」
ここに写るその人は、たった四度会った人でした。
家族でもない友人でもないまるで知らないその人は東北の海沿いの街に暮らしています。
特別な感情を持ち合わせていないまま誰かをあるがままに見ることができるだろうか。
あるがままを受容することができるだろうか。
東北の地に行きては帰る、繰り返すその光景を私は見つめていました。
写真集
木原千裕『いくつかある光の』
“「冬がいいですよ」
その人の声に従いこの地を訪れて今日で4度目となる。
家族でもない友人でもないまるで知らないその人は
東北のこの街に暮らしている。”
本作は、たった四度だけ会った東北の海沿いの街に暮らす人を被写体にしたシリーズです。木原は、2017年冬から2019年春にかけて、自身が住まう福岡からその人が生活する石巻へ計4回、撮影のために赴きました。赤の他人でもなく、友達とも言えない曖昧な関係で撮影された写真は、二人の生活圏をつなぐ飛行機や空港などの風景から始まり、その小さな街にそびえる煙突、季節によって表情を変える小高い山、いちご農場を舞台に、被写体の表情が瑞々しく切り取られています。
家族や恋人、友達という特別な関係ではない他者をテーマにした本作は、人生における無数の出会いと別れの連続の中で、一瞬自身と交わった存在を肯定し、あるがままを受け入れることができるのか、という試みでもあります。
収録点数は、写真賞応募時の83点から120点に増え、構成も大きく変更、写真集タイトルは応募時の「Path of Lights」から「いくつかある光の」に変わりました。
造本家・町口覚による、写真集には珍しい上質紙を本文用紙に使用した、軽やかな造本設計も必見です。
★2022年1月20創刊・雑誌『写真』(Sha Shin Magazine)vol.1 TOKYOに記事掲載
★2022年4月8日(土)日本経済新聞朝刊(全国版)文化面に書評掲載
いくつかある光の
著者 木原 千裕
造本設計 町口 覚
発行 ふげん社
印刷 渡辺美術印刷株式会社
発行日 2022年2月11日
サイズ 240×257mm
仕様 ソフトカバー・156頁
ISBN 978-4-908955-14-3
5,000円(税別)
展覧会
第一回ふげん社写真賞グランプリ受賞記念展
木原千裕「いくつかある光の」
2022年2月11日(金・祝)〜3月6日(日)
火〜金 12:00〜19:00
土・日 12:00〜18:00
休廊:月曜日、祝日(2月23日(水))
会場:コミュニケーションギャラリーふげん社
〒153-0064 東京都目黒区下目黒5-3-12
★3月5日(土)14:00〜
ギャラリートーク 木原千裕×飯沢耕太郎(写真評論家)×町口覚(造本家)
参加費 1000円(会場観覧・オンライン配信)
木原千裕 Chihiro Kihara
1985年福岡県生まれ
同志社大学社会学部教育文化学科卒業
〔個展〕
2017「それは、愛?」(Alt_Medium / 東京)
2017「それは、愛?」(ALBUS / 福岡)
〔グループ展〕
2021 第23回写真「1_WALL」展 (ガーディアン・ガーデン /東京)
〔受賞歴〕
2021 第23回写真「1_WALL」グランプリ
2018「塩竈フォトフェスティバル写真賞」特別賞
第一回ノミネート作品
卯月 梨沙 「幽明(ゆうめい)」
うつゆみこ 「ひ と と り」
浦部 裕紀 「in a vicious circle」
川口 翼 「藻のように」
木原 千裕 「Paths of Light」
高橋 小百合「BOX1」
圓谷 真唯 「FICTION ROMANCE」
寺崎 知水 「生」
藤崎 陽一 「PHANTOM」
山下 達哉 「silent introduction」